薬価制度の抜本改革で製薬会社にも暗雲が

最終更新日 2024年4月19日 by portclea

「薬価制度抜本的改革」スタートで何が変わるの?

2018年4月より「薬価制度抜本的改革」がスタートすることで、製薬会社に暗雲が立ち込めているといわれています。

それは、この改革において新薬創出加算の見直しがなされる他、長期収載品(特許切れとなった先発医薬品)についても、後発医薬品の参入から10年が経過したした時点で薬価を現在よりも更に下げるという、新ルールを導入するからです。

改革案によって、MR(医薬情報担当者)などの営業コストや、製薬業界全体の高いコスト体質を打開することが目的とされています。

世界4位の巨大製薬会社(メガファーマ)の日本法人において、薬価制度抜本的改革の前後に数百人単位のリストラが実行されることが、2017年末に分かったからです。

この企業では、2017年10月中旬に早期退職者の募集を始め、その人数は全従業員約4000人に対し約250人で、対象はMRなどを含む営業部門から管理部門、キャリアは30歳以上の勤続2年以上という幅広く募っていました。

特に50歳以上には、特別追加金として最大12ヶ月分の上乗せ金が付けられており、この年齢層が主なターゲットとされたとうかがえます。

早期退職者の募集では、結果的に400人以上の従業員が早期退職を希望し、退職していきました。

なぜ、会社の募集人数を150人も上回ってしまったのかというと、50歳以上では特別追加金が受けられるという手厚さがあった他、若手ではこの企業に居ても先が見えないと判断した為です。

さまざまな製薬会社でリストラが行われている理由

しかしながら、早期退職者の対象となっているのに退職を希望しなかった社員もおり、会社に踏みとどまった者に対しては厳しい処遇が待っていたのです。

それは、課長級以上のほとんどが降格扱いとなり、中には50代の営業所長が2018年1月から現場でMRとして働くようになった社員もいました。

それでも50代を過ぎての転職は厳しく、細々としがみつくしかないと必死でした。

このメガファーマは、これまでに日本の薬品工業会社が開発した、画期的ながん免疫治療薬と共に、免疫チェックポイントを阻害する仕組みを持った治療薬を販売して注目を集めたこともあります。

ところが、注目の画期的新薬を販売したメガファーマであっても、今はこの逆風に打ち勝つことができないのが現状です。

画期的新薬を開発するのは非常に難易度が高く、それを開発するための研究費用はどんどん膨らむばかりです。

しかし、これから始まる薬価制度の抜本的改革によって、画期的新薬に対する薬価優遇が見直される他、長期収載品の大幅な薬価見直しなどが実行されることなどにより、製薬業界全体で革新的新薬を生み出せず苦境に立たされているのです。

大幅な早期退職者を募集したのは、何もこの世界第4位の外資系製薬企業だけではありません。

国内大手の4社においても2012年には合計約22,000人、2016年には約20,000人の人員削減を実施しており、製薬業界で働く人たちは「次は我が身」と戦々恐々としながら今を生きているわけです。

この業界で生き残ることができる人材って?

とはいうものの、企業を存続させていくためにも新薬開発には力を注ぐ必要があります。

そのため、MRの中でも能力がない開業医担当の生活習慣病MRにターゲットを絞って早期退職者を迫り、その代わりに研究者としての能力を持つ若手社員には、冬のボーナスを上乗せして中長期的な人材の繋ぎ止めを行っています。

経済専門新聞が行った、平均年齢30歳以下の社員に対する2017年冬のボーナス支給額調査によると、第1位の企業では30歳で107万6,000円、第2位が95万8,000円、第3位が94万9,000円、第4位が92万3,100円、第5位が85万9,884円となっており、第1位においては約30歳でボーナスが100万円を超えているのです。

この上位5社のうち、第1位・第2位・第5位を製薬企業が占めており、企業としては能力のないと判断できる社員は早期に退職へ導き、その人件費を有能な若手社員へと使うことで、企業としての待遇の手厚さを印象付ける思惑があると考えられます。

新薬の開発には10年・20年単位での中長期的研究が必要となり、研究者はその間常に開発に没頭することになります。

しかし、研究の途中で辞めてしまうということは新薬開発の可能性がなくなることでもある為、企業としては避けなければなりません。

また、その研究費は全産業の中でもずば抜けて高く、高額な研究費を回収するためにも新薬の開発は必要不可欠となり、長期にわたっても進めていく必要があるわけです。

このような背景から、これまでは花形職種として高い人気を誇っていた製薬業界ですが、現在は4月よりスタートする薬価制度の抜本的改革がさらに追い打ちをかけたことにより、寒風が吹きすさぶ状況となっています。

島田製薬などの製薬会社求められている人材は、より専門性の高いMR活動が行える能力があるか、研究者として長期的スパンで新薬研究に携わることができるかにかかっていると言えるでしょう。

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