中小企業に適したランチェスター戦略の法則とは?

最終更新日 2024年4月19日 by portclea

一般的に、経営資源が乏しい中小企業が闇雲に大手企業に真っ向から立ち向かっても打ち勝つことは困難です。
しかし、競合他社との競争を回避するなどして市場で一定のシェアを獲得している中小企業も存在しますが、そのような中小企業の中にはランチェスター戦略を実践している企業が少なくありません。

ランチェスター戦略とは

ランチェスター戦略は、弱者と強者の両方が使える経営戦略ですが、特に弱者が強者に立ち向かうための戦略として世界中の企業が実践しています。
ランチェスター戦略は、第一次世界大戦中にイギリスのフレデリック・ランチェスターが提唱したランチェスターの法則と、第二次世界大戦中にランチェスター方程式から発展したランチェスター戦略方程式を掛け合わせた戦略です。
本来は、軍事戦略のモデルなのですが、マーケティング分野と共通している部分も多いため、現在ではビジネスシーンで使用されるケースも少なくありません。
また、フレデリック・ランチェスターが提唱したランチェスターの法則は、戦闘力は兵力の質と量によって決まるという法則で、弱者の戦略と呼ばれる第一法則と強者の戦略と呼ばれる第二法則の2つの法則に分けられます。

第一法則

第一法則は、一騎打ちのような原始的な戦いをイメージした法則です。
このときの戦闘力は、武器効率と兵力数を掛け合わせたものとなります。
つまり、武器効率が同じであれば兵力数が多い方が戦闘力が高くなり、兵力数が同じであれば武器効率が高い方が戦闘力が高くなるということです。
例えば、剣を持った10人の兵士から成るAグループと、剣を持った20人の兵士から成るBグループが戦闘を行った場合、Aグループは全滅し、Bグループは10人が生き残ります。
また、剣を持った10人の兵士がいるCグループと、銃を持った10人の兵士がいるDグループが戦う場合、剣よりも銃の方が武器効率が高いのでCグループは全滅し、Dグループは何人かが生き残ります。

第二法則

一方の第二法則は、一人で複数の相手と戦闘する広域戦や遠距離戦といった近代的な戦いをイメージした法則です。
この際の戦闘力は、武器効率と兵力数の2乗を掛け合わせたものとなります。
第一法則とは異なり兵力数を2乗するので、兵力数の差がわずかでも戦闘力の差は大きくなります。

弱者と強者のそれぞれが実施すべき戦略を示してくれる

このようにランチェスターの法則は第一法則と第二法則に分けられますが、この法則をビジネスシーンに応用したのがランチェスター戦略で、弱者と強者のそれぞれが実施すべき戦略を示してくれます。
なお、ランチェスターの法則では一位のみが強者となり、それ以外は全て弱者です。
つまり、市場シェアが一位の企業のみが強者、それ以外の企業は弱者として考えていきます。
ランチェスターの法則における第二法則では、兵力数の差がわずかでも戦闘力の差は大きくなってしまうので、弱者は第一法則を選択すべきです。
ただし、第一法則においても同じ武器効率であった場合は、兵力数が大きい相手には負けてしまうので、いかに武器効率を高めるのかが強者に対抗するカギとなります。
特に、中小企業は兵力数では大手企業には勝てないのが一般的なので、武器効率を高める戦略、つまり質を高める戦略を考えなければいけません。

強者の場合は第二法則を活用することで市場を独占することが可能

具体的には、労働環境を整えて業務効率を高めたり、各従業員のスキルを向上させたりすることで兵力の質を高めるとともに、強者との差別化を図り局地戦で戦うことが挙げられます。
例えば、大手企業のシェアが及んでいない顧客層や地域をターゲットにして、自社独自の製品を作ったり大手企業にはない強みを持ったりすることで競争優位性を確保する必要があるでしょう。
一方、強者の場合は第二法則を活用することで、市場を独占することが可能です。
ランチェスターの法則では同じ武器効率であれば兵力数が大きい方が勝利するので、ミート戦略と呼ばれる戦略を実施して、弱者の差別化戦略を阻止して、単純な兵力数で勝負していくのが基本となります。
具体的には、弱者が成功を収めた分野に進出して弱者の得意分野を奪ったり、弱者の優秀な従業員をスカウトして引き入れたりするのが強者が採るべき基本的な戦略です。

まとめ

以上がランチェスター戦略の概要となりますが、この戦略は業種や企業規模を問わず活用することができます。
しかし、この戦略が特に適しているのは中小企業などの弱者です。
この戦略は、弱者がどのようにして強者に対抗していくのかを示してくれるので、市場シェアが一位の企業との間に大きな差が生まれてしまった場合は、この戦略を活用することをおすすめします。
加えて、ターゲット層が明確になっていない企業もこの戦略を実施すべきと言えます。
多くの企業は、幅広いターゲットに愛されるような戦略を行いがちですが、このような戦略が上手くいくのは一部の企業のみです。
特に、中小企業の場合は不特定多数の層をターゲットとしても大手企業には対抗できないので、大手企業のシェアが及んでいない層をターゲットにして自社独自の製品を展開していくことが大切です。

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