保育園における保育士不足の深刻さ

最終更新日 2024年4月19日 by portclea

■保育士不足の原因とは?

共働きの家庭の増加により、小学校就学前の子供を保育園に預けて働くのが当たり前の世の中になっています。しかしながらその保育園で保育に当たる保育士そのものが不足している現状があり、保育園が運営できずに閉園してしまったり受け入れを制限するなどのところも現れています。

公立であれば保育士は公務員なので賃金などの給与や社会保障が充実していますが、公立そのものは数が多くありませんので民間に委託せざるを得なくなります。

民間企業や社会福祉法人が経営するところでは肝心の保育士への処遇が十分になされないために、必要な人員が確保できない問題が発生している状況です。保育園という箱物はあってもそこで働く保育士不足で開業の継続が出来なくなり閉園する有様となっています。

平均的な給与が他の職種に比較して大幅に安価であり、しかも目に見えない残業などの労務により現場が疲弊していることも人材不足に拍車をかけている有様です。

現場での疲弊が嫌で、有資格者がこの仕事を敬遠し他の仕事に流れていることも大きな問題になります。保育士の確保のためには賃金などの条件を良くせざるを得ませんが、その財源の確保が追い付かない状況も生じている状況です。

給与が安いなどの処遇面の悪さから保育士が集まらず、その結果として現場の保育士に仕事のしわ寄せが行ってしまい疲弊することに繋がっています。さらに仕事の多さと賃金とがマッチせず退職してしまい人手不足に輪をかけるという悪循環になっているわけです。

■少子化と保育士不足は関係あるの?

今後の日本では少子化と高齢化が急速に進行し、人口減少に歯止めがかかりませんが、子供を産んで育てようと思っても景気が悪いままで賃金が増えていません。

結果、夫婦の共働きで収入を増やす道を探すわけですが、子供を預けたいという気持ちも、受け入れてもらえる保育園が無かったりあるいは認可外のところに預けざるを得ない有様です。

これでは子供を産んで育てていこうという思いは持ちようが無く、あるいは子供が欲しいと思っても1人だけでいいという判断に繋がります。

こうしたころから少子化に歯止めがかからず、人口減少や社会保障に重大な問題が起こってしまうという流れが出来上がっています。厚生労働省を中心に少子化対策は待ったなしですが、現状では歯止めがかかっていない状況です。

保育士不足解消こそがまずは優先される問題であり、次いで保育園という箱物の整備も行っていくことが求められます。

地方自治体では子供を預けられる保育園の整備が重要課題になっていますが、その箱物の整備が出来ても働く保育士が不足しているのでは運用しようがないです。

神澤光朗氏は「国と地方とで保育園の整備は徐々に出来て来つつありますが、すでに少子化の流れが出来上がってしまっている以上、この流れを止めることは容易ではないです。ただし、だからといって何も手を打たなければ少子化が進行し続けるだけですから、箱物の整備とともに人手不足解消も考慮していく必要はあります。」と言っています。

■保育士が安心して働ける環境とは?

子供を預けて働きに出ようと思っている親の間では、保育園では無く幼稚園に預けるという裏技を使う人もいます。幼稚園は通常は定時になったら親が迎えに来るものですが、その定時は午後の2時や3時で普通は迎えに行けないものでした。ところが保育園の現状を鑑み、長く預けられるようにしているところが現れています。

幼稚園だけではありません、保育園でも認可外のところが高額な報酬と引き替えに受け入れることが出来るところはあります。ただし、無認可のところでは保育の質が良く問題になっており、問題解決に至っていない状態です。

幼稚園にしても無認可保育にしてもいずれにしても保育園の現状で受け入れられないところの受け皿として機能している訳ですから、保育園の保育士不足が解消されればこの受け入れ先がないという問題がクリアできるものです。

制度面でも幼保一体型などの施設も整備されてきましたが、問題解決にはそれほど効果があるわけではなく、結局人手の問題に行き着きます。

保育士が安心して働ける環境と、残業の縮減などにおける働き方について、しっかりと考えるときが来ています。少しずつではあっても改革の流れを止めること無く、保育士が安心して働ける環境整備を政治と行政は行っていく必要があります。

また預ける親側も保育園の状況をよく理解し、また申し込みの期限等のチェックをまめに行うなどして、生まれてきたこと子供がほったらかしにならないように、適切な保育が受けられるようにする努力が必要です。場合によっては昔のように、祖父母が迎えに行くことで幼稚園に通わせるなどの対応も考える必要が出てきます。

保育士の処遇改善により少子化に歯止めをかけていくことは、喫緊の課題です。預けられずに子供をあきらめてしまう親が現れないようにすることこそが、政治と行政には求められています。国にあっても地方自治体にあっても、この問題解決のために色々な対応を行うことが重要です。